kitenの一階にあるお店では、日本各地の職人さん、作家さん、国内の
主に東北や広島、九州で作られている自然素材の服や服飾小物、生活雑貨を扱っています。
お店をのぞいてくださるお客様には「メイドインジャパンなら作りもしっかりしていて、間違いないだろう」という
気持ちでくる方も多いけれど、
これは日本で作られているものなのね、と話すときの無条件に親しい感じには品質がどうという以前に、
「どこかで自分とつながっているものに触っている」という根っこのような喜びも混ざっているような気がします。
お店という場所、ものを選ぶという行為はとても面白くて、
初めましての人間（スタッフ）にたいして、赤の他人がいっとき、少しだけ素をみせてくださるところです。
そのパーソナルな部分をちらっとゆだねてくる一瞬を、こちらがこぼさずに
両手で受け取るようにして
店に立っていると、思いがけないときにそのひとの中にあるとてもキレイなものを見せてもらえることがあります。
先日はウチのお店にしてはずいぶんと若い、たぶんまだ学生のお客様が、
ものすごく真剣な表情で、すごく長い時間をかけてTシャツを選んでいました。
お店で扱っているシャツは、コットン1つとっても産地も織り方もデザインも色々あって
襟のあきはどれが一番自分に似合うか、袖の長さは？
これから暑くなって汗ばむ時期でも着まわせて、冷房が効いているときでも着るにはどれがいいのか。
自分の肌の色、顔立ち、雰囲気、体型に似合うのは？
クローゼットの中はこんな服があるけれど、どれとどう組み合わせればいいのか。
など、あんまり沢山の質問と試着をされるので、
しまいには二人で椅子に座ってお茶をしながら、1つ1つ相談して（試着ってとても体力を使うのです）、
1時間後にやっと彼女の1枚がきまりました。
選んだのは、育ちのよいお嬢さんといった彼女の雰囲気に似合う、
灰色がかったベージュのエジプト綿を使った、少しクラシカルで糸のツヤが綺麗なTシャツ。
いろんなお店をさがしてみたんですけど、Tシャツ1枚でこんなに時間をかけて親身になって一緒に選んでもらったのは初めてです。と仰るので、似合う1枚がみつかってよかったですねぇ（頑張った甲斐がありました）と言うと、
「本当は色々欲しいけど服に使えるお金があまりないので、１シーズンに1~2枚って決めてて、それで全部と
着まわせないとダメなんです。だから聞きたいことも多くて…」
と申し訳なさそうな彼女。
大切なワードローブをお金を払って買う、という当たり前のことをしているのに
申し訳ないですと言う彼女は、今までにいくつの店をハシゴしたのでしょうか。
その中に、1シーズンたった１，２枚の大切なワードローブを選ぶという願いに
ちゃんと応えて向き合ってあげられるお店やスタッフはいなかったのだろうか。
いないのだとしたら、何人も、1日中お店に人間が立っている意味ってどこにあるんだろうか。
（とちょっと、いや結構ひとりで憤慨！）
でも、そんな風に自分とぴったり添わせるようにして服を着るかしこい女の子に満足してもらえる1枚を
うちから選んでもらえてよかったな、彼女の願いを間違えずに見過ごさずに受けとめられてよかったなぁと嬉しくなりました。
さて、今日もスマイル増量、心のレンズを光らせてお店に立っております！
