はじめまして。
kitenのパートナーとして、
言葉を中心にコミュニケーションの設計を担当している
柳瀬武彦と申します。

北山さんとはじめて出会い、
「会社を刷新するので、会社名やロゴマークなどすべてのコミュニケーションを考えて欲しい」
とご相談いただいたのは、2016年の年末のことでした。
言葉を書く仕事は、言葉を聞くことからはじまります。
僕は北山さんの頭の中と眼差しの先にある世界をつかまえるために、
じっくりとお話をうかがいました。

最初に手渡されたのは「森が海をつくる―ジェイクのメッセージ」という一冊の絵本。
森と海という一見とても離れた場所にあるものが、
実は非常に密接に関係していることを教えてくれるだけでなく、
すべてのものは関係性の中で影響を与えあって存在しているということに
改めて気づかせてくれるものでした。

資本主義と不動産業界のこと。
まちづくりのこと。
ボーイスカウトでの体験のこと。
中村天風や河井寛次郎のこと。
合氣道のこと。
たくさんの想いやイメージを北山さんからお聞きしました。
もはや不動産屋や設計事務所という枠には収まらないその大きなイメージを、
どのように言葉や絵にしていくか。
絵本を何度も読み返しながら、軸となる言葉を探していきました。

「住宅や空間をデザインするのは手段であり、
本当の目的はそこで過ごす人たちの心地をつくることだ。」
というお話を聞いた時だったと思います。
この会社の役割は、見えるものをデザインすることで、
見えないことをデザインすることなんだなあ。
心地のよい場所に人々が集い、よい心地は人から人へと伝わり、
街に心地が充満していくといいなあ。
今まで断片として存在していたイメージが、
森と海をつなぐ川のように、一本の線でつながっていきました。

会社の名前は「kiten」。
よい気をつくり、縁をつくる起点となる。
そんな想いが込められています。

会社の事業と社名の関係は、料理と器の関係に似ているのかもしれません。
器は料理を引き立てますが、あくまで主役は料理です。
kitenという器にこれから何が盛りつけられていくのか、僕もとても楽しみです。

つくること つなぐこと つむぐこと